こんにちは、carbonです。
今回は弱酸弱塩基のpHと一塩基弱酸・一酸弱塩基について解説していきます。
酢酸やアンモニアといったものから、炭酸ナトリウムやリン酸カルシウムといった塩のpHを問う問題が非常に多く出題されます。混乱しやすい分野でもあるのでしっかり学習しましょう。
弱酸弱塩基の前に強酸強塩基から
強酸強塩基のpH計算は高校化学で扱っていると思います。しかし、弱酸弱塩基の内容を意識しすぎて強酸強塩基のpH計算ができなくなってしまったという事例を数多く見てきましたし、実際に体験もしました。そのため、復習がてら取り扱っていきます。
強酸のpH=(-logC)
強塩基のpH=14-(-logC)
※Cは溶液の濃度(mol/L)
新しい文字列と意味をおさえよう
この分野ではpHのほかにも様々な文字列が登場していきます。量は下記に記した通りそこそこありますが、共通項が多いので覚える量としてはそれほど多くありません。
pH:-log(H+の濃度)
pOH:-log(OH–の濃度)
※pH+pOH=14
Ka:(H+の濃度)(平衡状態の共役塩基の濃度)/(平衡状態の酸の濃度)
Kb:(OH–の濃度)(平衡状態の共役酸の濃度)/(平衡状態の塩基の濃度)
pKa:-log(酸解離定数Ka)
pKb:-log(塩基解離定数Kb)
※pKa+pKb=14
Ka、Kbは今回扱いませんが、後々出てきます。頭の隅に入れておいてください。
一酸弱塩基と一塩基弱酸とは??
高校化学では溶液の酸塩基に関わらず中和反応によって生じた物質をまとめて「塩」と呼んでいましたが、薬学では溶液の酸塩基によって呼び名が変わります。それほど難しくないので頑張って覚えましょう。
一塩基弱酸:価数が1で溶液が酸性を示す塩
一酸弱塩基:価数が1で溶液が塩基性を示す塩
弱酸弱塩基pHの公式を覚えよう
弱酸、弱塩基によってpH計算に微妙な違いがあります。
弱酸のpH=(弱酸のpKa-logC)/2
弱塩基のpOH=(弱塩基のpKa-logC)/2
弱塩基の公式で出る値はpOHであるため14から引く必要があります。忘れる事例がとても多いので忘れないよう注意してください。これらは塩の溶解におけるpH計算ではありませんが、塩のpH計算にも応用することができます。ただし、pKaおよびpKbは弱酸、弱塩基由来となり、酸性溶液はpKaに、塩基性溶液はpKbに変える必要があるので注意してください。
~塩のpH計算方法~
Amolの酢酸ナトリウム水溶液のpHを計算しなさい。ただし、酢酸のpKa=Xとする。
⇒ 酢酸ナトリウムは弱酸強塩基の中和により生成する塩であるため塩基性。そのため、pKaは使えずpKbに変換し、弱塩基の式を使用。
⇒ pOH={(14-pKa)-logC}/2
実際に問題を解いてみよう
これまでの説明をふまえて実際に問題を解いてみましょう。
(1) 1.00×10-2mol/L酢酸水溶液のpHはいくらか。ただし、酢酸のpKa=4.60とする。
(2) 0.100mol/L塩酸100mLに0.100mol/Lアンモニア100mLを加えた溶液のpHはいくらか。ただし、アンモニアのpKb=4.40、log2=0.300とする。
Point:pKa、pKbの使用を適切に行うことができるか。
(1) 酢酸は弱酸であるため、弱酸の公式を使用し、
pH={4.60-log(1.00×10-2)}/2
となり、pH3.30であることが分かる。
(2) この問題はまず溶液の反応と混合液に含まれる化合物の濃度を考える必要がある。塩酸とアンモニアは両方とも価数が1であるため1:1で反応する。濃度と加えた量が等しいことから溶液に含まれる化合物は塩化アンモニウムのみであり、0.100mol塩化アンモニウム水溶液200mLとなる。これらをふまえて溶液の濃度を計算すると、
0.100÷(200/1000)=0.500
より、0.500mol/Lである。また、塩化アンモニウム水溶液は酸性であるため、pKbをpKaに変換する必要がある。
pKb=14-4.40=9.60
以上の値を弱塩基の公式に代入し、
pOH=(9.60-log0.500)/2
pOH=4.95
pH=14-4.95
pH=9.05
となり、この溶液はpH9.05であることが分かる。
まとめ
いかがでしたか。
高校では電離度を使用して弱酸弱塩基溶液のpHを計算していましたが、薬学ではpKa、pKbを使用して計算します。この先似たような式が出てきます。しっかり復習し、混乱しないよう整理をすると良いと思います。
弱酸弱塩基のpHに関する練習問題を作成したのでぜひ解いてみてください。
これからも薬学の勉強を一緒に頑張りましょう。
~練習問題作成中(近日公開)~
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