薬学分析化学Part2 希釈と分子の形による濃度・pHの変化

こんにちは、carbonです。

今回は溶液の希釈と溶質の形による濃度・pHの変化について解説していきます。

溶液は多くの場合、原液を希釈して実験を行います。そのため、希釈に必要な原液・蒸留水を計算で出せる必要があります。また、これまでは溶液に溶質がどれだけ溶けているかをのみをpHの変化として考えてきましたが、特に難溶性の有機物の場合、pHによって溶解度に変化が現れます。pHによっては沈殿が生じてしまい、点滴薬などでは重大な医療事故につながりかねません。しっかり学習しましょう。

希釈の考え方

希釈の問題は、加える原液量が希釈の倍数の逆数になるように蒸留水を加えれば良い。すなわち、1.0mol/Lの溶液100mLを2倍に希釈するためには、100mLが希釈後の溶液全体量の1/2になれば良いため、100mLの蒸留水を加えれば良いということになり、10倍に希釈するためには900mL加えれば良いということになります。

pH変化に伴う分子型・イオン型の変化

難溶性の有機物はpHによって分子型・イオン型の2種類を行き来します。pHが低い酸性条件下ではイオン型の割合が小さく、一定値以下では場合によっては沈殿を生じます。また、pHが上がるにつれイオン型の割合が大きくなります。

分子型・イオン型の公式を覚えよう

有機物を溶解させると溶液中で分子型とイオン型の2種類になります。また、分子型とイオン型の割合はpHによって変化し、pHと分子型・イオン型には下記のような関係にあります。

pH=pKa+log([A]/[HA])

※[A]…酸のイオン型、[HA]…酸の分子型

pOH=pKb+log([HB+]/[B])

※[HB+]…塩基のイオン型、[B]…塩基の分子型

実際に問題を解いてみよう

これまでの説明をふまえて実際に問題を解いてみましょう。

(1) 1.0mol/L塩酸水溶液10mLを10倍に希釈した溶液を作成するためには、蒸留水を何mL加える必要があるか。

(2) pH6.60酢酸水溶液中のイオン型は、分子型の何倍であるか。ただし、酢酸のpKa=4.60とする。

Point:何がどれくらいの割合で含まれているのかを整理できるか。

(1) 10倍に希釈するためには、希釈後の溶液に対する原液の割合は1/10である。このことから、蒸留水は希釈後の溶液の9/10加えれば良い。1/10が10mLであるため、蒸留水は90mL加える必要があることが分かる。

(2) 酸のイオン型・分子型の割合を求めるため、pH=pKa+log([A]/[HA])に代入して計算する。

6.60=4.60+log([A]/[HA])

log([A]/[HA])=2.00

[A]/[HA]=102.00=100

よって、pH6.60酢酸水溶液中のイオン型は、分子型の100倍であることが分かる。

まとめ

いかがでしたか。

前回のPart1と今回のPart2の内容は知識が混同してしまい、公式をうまく使えない人が多く出る分野になっています。しっかり復習し、知識の整理を行いましょう。

希釈・分子型に関する練習問題を作成したのでぜひ解いてみてください。

これからも薬学の勉強を一緒に頑張りましょう。

~練習問題作成中(近日公開)~

薬学分析化学
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